2006年08月27日

ロシア映画『太陽 The Sun』

終戦直後の昭和天皇の苦悩を描く“ロシア映画”『太陽 The Sun』
http://taiyo-movie.com/

観てきた。
座席は1/3程度埋まっていたようである。地味な映画の、川崎チネチッタの、平日夕方の回としては、こんなものかもしれない。カップルやオタクよりも、映画マニア風の人が多かったような。

ストーリーはこのへんを見ていただくとして、
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=7167

まずこの映画は、娯楽映画とはいえない。昨年上映されたドイツ映画『ヒトラー 〜最期の12日間〜』のようなのを期待してはいけない。天皇のプライベートの部分がメインであり、歴史映画とも言えない。まあ、実在の人物をモチーフにした芸術映画とでも言うべきか。

登場人物も場面転換も少ないこの映画では、とにかくイッセー尾形演じる昭和天皇の演技に尽きる。元々の無表情は崩さず、プライベート、パブリック、そして皇后と会う時と、それぞれ明らかに異なる印象を与える。我々が唯一目にできるパブリックな状況での振る舞いは、我々の記憶にある昭和天皇にかなり似ていたように思う(風貌そのものはあまり似ていないが)。
突発的で不可解な動作を交えながらも、神格と人間性、国と国民の行く末、皇室の将来について、ひたすら孤独に苦悩する様は、見ていて痛々しい。人間くさく苦悩したり悶絶したり恍惚としたり怒ったりする天皇を冒頭からひたすら見せられていると、最後に天皇が決断する人間宣言という不可思議な“宣言”を必要とする戦前の異様さ(現代の我々から見た異様さ)が際立ってくる。

天皇の苦悩を知りつつもあくまで臣下としての振る舞いを貫く侍従長や、クライマックスで登場する、天皇と苦悩を共有できる唯一の人物である皇后、自分の心を一切出さないように注意深く振る舞う天皇を『子供のようだ』としか受け取れないマッカーサーなど、脇役の演技も素晴らしい(こちらも、実際の人物にはあまり似ていないが)。

この映画は、有名な歴史上のイベントが再現されているわけでも無く、日本人が見ても、アメリカ人が見ても、カタルシスは少ない。そして日本人から見ても、天皇の苦悩を理解は出来ても、共感できるかというと難しい。
決して面白くないわけではないが、評価が難しい映画である。まあ、少なくとも日本やアメリカではない国であるロシアだからこそ作れた映画であることは間違いない。そしてこのような映画が、少ないとはいえ全国で上映できるようになった日本も、変わったものである(何しろまだ崩御から18年である)。

余談であるが、逆にロシア映画だからこそ感じた、妙な部分もある。全体的に、日本が舞台である感じが全然しない。特に皇居外の焼け野原の東京が、まるで終戦直後のベルリンである。ロシア人にとっては、破壊された都市というのはこういうイメージなんだろうか。
posted by UMMO at 03:35| ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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